幻影の書

幻影の書

中盤がものすごくおもしろかった。ヘクターの歩んできた人生のあたり、あとその前あたりが。
ものすごかった、としか言いようが無いのだが、正直なところ、途中、映画の細かい説明のあたりは、オースターじゃなかったら読まずにやめてしまったかもしれない。結果的に読んでよかったのだが。

ひとつの箱を開ける。試行錯誤しているうちにぱかっと蓋が開いてまた別の箱が出てくる。再び悩む。また箱が現れる。また、箱、箱。物語に入り込んでいくうちに、どのできごともすべてつながっている。という印象。


失う。得る、失う。オースターの小説全てに流れているその繰り返し。現実なのか、幻なのか。そんなことはどっちでもいいのだ。『ムーン・パレス』でキティ・ウーが言っていたように、何が事実なのかよりも何が真実かが大事なのだ(キティ、言ったよね?)


打ち合わせの途中、「リョウちゃん、鍵落としたって。きょう、ハダカになってたし」という会話が聞こえてくる。そりゃ、鍵も落とすさ。