やさしい訴え (文春文庫)

やさしい訴え (文春文庫)

だいぶ前に図書館で借りて読んで以来。再読。
愛人を作って家に寄りつかない夫。ある日「わたし」は山の別荘で暮らすようになる。近所には、ピアニスト人生を閉じざるを得なかった過去を持つチェンバロ職人と、その弟子(若い女性)がいた。三人の織り成す奇妙な関係。
前に読んだときはいろいろ腑に落ちなかったのだが今回はいろいろ腑に落ちた。おもしろいなぁと思ったのは、誰かを好きだとか愛しているとか嫌いだとかそういう感情とは別のレベルで、登場人物たちが誰かを救ったり求めたりしていることだ。誰かと出会い、すれ違っていく一瞬で、その誰かに何かを与えられるというのはどのような形であれすてきなことだと思った。
ちらちら出てくる太った奥さんがなかなかよかった。