オリンポスの果実 (新潮文庫)

オリンポスの果実 (新潮文庫)

息子である作家の田中光二さんが、父のことを私小説という形で描いた本らしい。

小説家(田中光二氏と思われるような)が人生に行き詰って沖縄の離島に旅し、ある老人と出会い、父親への葛藤を昇華させていくというような内容。

これを読んで、いろいろ判明しました。だいぶわたし、田中英光さんのこと誤解していました。

田中英光は、体ががっちりとした人だった。

だからなんだ?と思われた方いると思いますが(笑)。
オリンポスの果実』は、大学ボート部がオリンピックの代表選手団としてサンフランシスコに行く船の中での出来事(というか、だいたいが主人公の頭の中でのこと)。文章がほんとうに繊細で繊細で、しかも太宰治の弟子だったらしいので、勝手に体の細い人だと思っていた。
ところが、ほんとうにボートの選手で頑丈な体つきだったらしい。その頑丈さゆえに太宰治の墓の前で自殺したときも、薬を大量に飲んだけれど体が丈夫すぎてなかなか死ねなかったらしい。

勝手に顔が青白い人だと思っていたので、これはちょっとびっくりだった(完全に誤解なのだが)。


『オリンポスの黄昏』自体の感想。

父親の死後、ずっと父を許せずにいた主人公が、父と(あのような形でも)和解できてよかったと思った。「父親を許せない自分」を許した、ということだったのかなぁと。

離島でフラフラと老人に出会い、一緒に酒を飲む場面では魚がおいしそうでおいしそうでならなかった。老人が眠っている場面がよかった。最後の場面は、正直に言えば若干作りすぎという気がするけれど、直接の対話でないと解決できない思いがあったのだろうと思う。つまり、一方的に「許します」ではなくて。
なぜだろうか、映画『シックスセンス』を思い出してしまった。