体は全部知っている (文春文庫)

体は全部知っている (文春文庫)

どんどん時間が流れて行って、疲れているときやしんどいときにふと美しい瞬間が偶然現れて、神様がくれたごほうびだ、と思うみたいな一節があって(うろ覚え)、そのことを思い出した。花火はちゃんと美しく、ちゃんと打ちあがってちゃんと夜空に消えていった。そして火薬のにおい。夏のにおいだった。

どんよりとした朝に向かって咲く、季節外れの朝顔のように美しかった。世界はこんなに美しいのだ。